足がつって痛い…
そんな患者さんのひと言がきっかけで、私が思い出したのは“足三里”というツボでした。
看護師として働いていると、患者さんのちょっとした不調に出会うことがあります。治療中だけでなく、治療後の帰宅前など、思いがけないタイミングで「足がつって動けない」「まだ痛みが残っている」といった声を聞くことも。
今回の記事では、実際に現場で行ったツボ押し体験と、そこから感じた「知識のシェアの大切さ」についてお話ししたいと思います。
足がつった患者さんへの“思いがけない対処”
ある日、患者さんが、治療が終わる頃に「足がつったみたいで、まだ痛い」と話されました。
実はこの方、治療中に軽く足を動かしていた際、ふくらはぎにピキッとした痛みが走ったとのこと。すぐにはどうにもならず、治療が終わっても違和感が残っているようでした。
本来であれば、温める・ストレッチする・時間を置く…といった方法が一般的ですが、この日は限られた時間の中で、何かできないかと考えていました。
そこでふと思い出したのが、「足三里(あしさんり)」というツボ。
これは私自身が以前にに少しかじった東洋医学の知識から得たもので、実際に自分の足がつったときにも、軽く押すことで症状がやわらいだ経験がありました。
「これは…やってみる価値があるかもしれない」と思い、患者さんに「試しにツボを押してみてもいいですか?」と声をかけました。
“足三里”ってどこにあるの?簡単セルフチェック法
足三里は、ひざのお皿の外側から指4本分下にあるくぼみ。すねの骨のすぐ外側にあり、指で押すと少しズーンと響くような感覚があるのが特徴です。
東洋医学では、「足の疲れ・胃腸の調子・免疫力の向上」など幅広い効果があるとされ、「養生のツボ」としても有名です。
場所:ひざの外側の下、およそ指4本分
押し方:親指または中指でやや強めに5秒ほど押す → 3〜5回程度繰り返す
感じ方:「ちょっと響く」「ズーンとする」ならOK
もちろん、西洋医学的な科学的根拠が明確に示されているわけではありませんが、血流改善や筋肉の緊張を緩める効果があるという説もあります。
実際にやってみた結果は?患者さんの反応とその後の会話
ツボの場所を確認し、やさしく押してみると、患者さんから「なんか、さっきより楽になった気がする」との反応が。
それを聞いた周囲のスタッフや患者さんが、「何をしたの?」「どこ押したの?」と興味津々に集まってきました。
「これは“足三里”というツボで…」と説明すると、「知らなかった!」という声が多く、ちょっとしたミニ講義のような時間に。
「完全に治るわけではないけれど、一時的に楽になることもあるんですよ」と伝えると、「次につったときに試してみたい」というスタッフや患者さんが何人も。
特に立ち仕事のスタッフたちは、「私も足がつることあるから、覚えておこう」といっていたのが印象的でした。
足がつる原因と予防のヒント
足がつる原因にはさまざまな要素があります。
- 水分・ミネラル不足(特にマグネシウム・カリウム)
- 冷えや血行不良
- 筋肉疲労や同じ姿勢の持続
患者さんの場合、電解質バランスの変化が要因であることも。
ツボ押しは即効性のある治療法ではないけれど、セルフケアの一環として知っておくと安心感があります。
それに、薬や医療機器に頼らず「自分でできるケア」というのは、意外と心強いものです。
知識を“渡す”ことで広がる安心感
今回の出来事を通じて改めて思ったのは、「知っているだけで、できることが増える」ということ。
たとえば「足がつる=我慢するしかない」ではなく、「こんな対処法もあるかもしれない」と思えるだけで、気持ちが楽になることがあります。
また、看護師としての役割は、単に症状を観察するだけではなく、「ちょっとしたヒントを共有すること」にもあるのだと実感しました。
セルフケアに役立つ知識を伝えることで、患者さん自身が自分の身体と向き合うきっかけにもなる。それが、QOL(生活の質)を上げる一歩になるかもしれません。
まとめ:ツボ押しは“やさしい選択肢”のひとつ
足三里のツボ押しは、決して万能な方法ではありません。すべての「足がつる」症状を改善するわけでも、即効性があるわけでもない。
でも、「知っていると、ちょっと助かる」。
その“ちょっと”が、仕事の現場でも、家庭でも、自分自身にも役立つことがあります。
大がかりなケアではなく、ほんの数分の手当て。
それが誰かを救うこともあると気づけた体験でした。
あなたももし、ふくらはぎがピキッとつるようなことがあったら、試しに“足三里”を押してみてください。
そして、その知識を、そっと誰かに渡してあげてみてください。



コメント